未来考房/瓦人 ~gajin~

和瓦とその未来を創る淡路島の瓦師ブログ

文化的価値とは…

尾道 ホテルプロジェクト…木造改修棟の本葺き瓦施工。

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瓦一枚一枚の鉄分含有量の差と、炎の気まぐれが生む、土を焼いただけの素朴で豊かな表情が描かれ出しました!

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計算ではつくれない古彩色のグラデーションは焼きものらしくとても綺麗です。

一昨年前、300年ぶりに再建された国宝 興福寺中金堂の瓦と同じような景色に焼きあがったことが内心嬉しいです(^^)

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文化的価値とは…

「計算ではつくれない」この本質的な価値を理解してもらうには理屈ではなく“感覚”が必要。

以前、四国88カ所の一番札所「霊山寺」本堂がチタン屋根材で改修されましたが、全体意匠はもとより細部の仕様にいたるまで、その成型・再現技術は見事であり、これはあまり必要性に疑問を感じるが、エイジングで古びた風情まで表面塗装で表現されています。

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僕たち“瓦人”が見ると、素材感や感覚的に感じる雰囲気含めて、どこか薄っぺらくハリボテの映画セットのように感じ、一目瞭然で“土を焼いた瓦”ではないと判断できますが、残念ながら一般の人々では素直に「新しい瓦」で改修されたと思うでしょう。

《個人的には、和瓦のカタチを真似たりせず、チタンならチタンらしく建築ごと近未来的な新しいデザイン提案をする方がいいと思う》

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浅草寺はじめ、軽いという絶対的優位性で全国においてチタン屋根材が施工される例が増えていますが、そのために浅草寺宝蔵門のように近い将来の文化財登録の資格を失ったものもあります。

多くの外国人観光客が、これら新建材の屋根を見て「Beautiful!Wonderful!」と言われるのには正直違和感がある。

“本物”と“偽物”とは誰がどの物差しで判断するかにより変わるが、例えば木と土と石と草と瓦、そして歴史の積層と技術の伝承の先にある建築こそが文化的価値を有する“本物”だと、個人的にはごく自然に腑に落ちる。

最新技術で創り出されたチタン屋根材は、確かに圧倒的軽量化を実現し、意匠においても瓦の真似事を完璧にこなし、ある意味で消費者にとっての一つの“価値”を提供できていますが、透湿性0%で熱伝導率ほぼ100%の金属屋根材が、1,000年余の歴史と物語を繋ぐに見合う建材たるかといえば疑問が残る。

そこが文化的価値を失うということの一つの裏付けですが、価値観がこれだけ多様化する現代だからこそ、各地の伝統建築やシンボリックな建築こそ、せめてアイデンティティや、本来具わるべき美意識、そして言葉で表現するまでもない大切な価値を失わないでほしいと思います。

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