未来考房/瓦人 ~gajin~

和瓦とその未来を創る淡路島の瓦師ブログ

かわらのおはなし…

この猛暑の夏…設計者や建主はじめ、工場やギャラリーにお越しになるお客様等いろんな方から、瓦のメリットやポテンシャル等、改めて基本的なことを最近とくによく質問いただくので、同じような猛暑だった2018年の論考をrepost。

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「台風による被害映像でよく見られた屋根材と屋根の飛散についての考察」

とくに目立ったのは、薄型スレート系屋根材と金属系屋根材の大飛散による近隣建物や車両等への二次被害

*これら屋根材については「瓦」の場合と違いほとんどの報道局で「飛来物」という呼称で統一されていたことにとても違和感を覚えた記憶がある。

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瓦と違い、単純にそれら屋根材は施工にあたり野地との隙間がほぼ無く、軒先から吹き込んだ雨水の毛細管現象等による逆流で広がる高含水状態の長期化、また構造上 通気しにくいがゆえの屋根材と野地の間の結露の滞留等が主原因による野地板腐朽の進行により、留め付けが効かなくなっている状態での強風被害で簡単に吹き飛んだと思われます。

他への間接被害は深刻なものであり、物的損壊はもちろん、人を襲えば命に関わる重大な危険を伴います!

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紹介するデータは、つくば建築試験研究センターによる「木造住宅の耐久性向上に関わる建築外皮の構造・仕様とその評価に関する研究」。

ようは屋根材別 長期曝露試験による野地等の経年変化比較試験です。

曝露期間は30年超!結果、和瓦以外は明らかに下葺き材と野地の腐朽が見られます。

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以下、研究論文より引用…

軒先付近の劣化は金属系屋根材で顕著。

特に,瓦棒葺きは軒先付近の芯木直下の下地が劣化している。芯木自体も軒先部が著しく劣化し、一部消失し ているものがあることや,芯木下部に下葺き材が無いことから,桟鼻付近から雨水が浸入して劣化に至ったもの と考えられる。

またケラバ部からの漏水と屋根材同士の取合い部からの雨水侵入による影響も大きい!


現在、金属やスレート系屋根材の普及が多いが、結局は同様の構造なので、経年で野地板が腐朽するリスクを抱えています。

この理由により、台風被害による軽量屋根材の大飛散、さらには軽さが裏目に出た屋根ごと全部の飛散が多く発生したと思われる!

和瓦ならば、特に古い屋根において落ちたりズレたりこそすれ、竜巻でも起きない限り、映像であったように風に舞うように飛んだりしません。

これは空気力学的見地からも根拠があり、山あり谷ありの形状が飛散を抑制し、平たく面積の大きいものほど風圧の影響を受ける。


また、兵庫県工業技術センターによる「屋根材の違いによる屋根表面および屋根裏温度への影響の検討」では、和型いぶし瓦、平板瓦、ガルバリウム、コロニアルの4種類の屋根材を試験架台に施工し(断熱材等なし)、屋根材直上と野地裏直上に温度計を設置し、夏場の実験棟屋上にて4日間 昼夜継続して測定。

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サーモグラフィーの通り、表面直上温度はもちろんどの屋根材でも高温となるが、野地裏直上温度は金属やスレートと比べて、土を焼いた“瓦”は10℃近くも低くなる。

断熱材も何もない単なる素材のポテンシャルだけで、ルーフィングや野地板等建築にかかる負荷に夏と冬ほどの差が出る。

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これは多孔質で断熱性能を有し、また呼吸・調湿する“土もの”としての素材優位性もあるが、形状特性として野地との間に設けられる通気層の存在効果が大きい。

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建築建材として“絶対”というものはないが、先人の叡智とその積み重ねが紡ぐ1,000年余に及ぶ瓦の歴史とは改めて素晴らしいものであり、その歴史の系譜の一端を担うものとして、この素晴らしい建材を未来に繋げるべくますます精進したい!

またその先では瓦屋根が織り成す美しい日本風景を、守るだけではなく津々浦々に新しく創っていきたいと思う(^^)

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地震による瓦の重さに対する風評被害は依然続きますが、それを推して余りあるメリットの方が大きいということを知ってほしい。

一刻も早く“軽く薄っぺらい“考え方を見直し、強靭な足腰で地に足つけた仕切り直しが必要な時だと思う!

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#再生可能エネルギー #持続可能性 #サステナブル #低炭素 #脱炭素 #カーボンニュートラル #sdgs