未来考房/瓦人 ~gajin~

和瓦とその未来を創る淡路島の瓦師ブログ

銀古美「木瓦−kigawara−」

アコーディオンのように繊細でリズミカルな陰影が美しい窯積み風景は“木瓦”!

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乾燥素地で全長415㎜あり、一般的な瓦だと300㎜前後のものが多いので、玄人ほどその見慣れない大きさ(長さ)が新鮮に映る。

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この415㎜が390㎜まで収縮するが、さすがに薄く長い木瓦…まして“いぶし瓦”より高温の“銀古美”焼成により、反り、むくり、いろんな個性が生まれて窯出しのたび一喜一憂する。

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言い訳すれば、この“個性”が木羽のような自然な葺き重なりをつくり、その不均一な陰影の連続が屋根に生き生きとした生命力を纏わせる。

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#銀古美 #木瓦 #国宝建築 #異人館 #洋館 #天然スレート #タイル #tile    #vintagetile

香川の農家住宅

火入れ式に始まる「香川の農家住宅」prj.

story ▶︎ https://gajin.hatenablog.com/entry/2021/06/12/135007

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熨斗2段を“素朴な1段”に見せる“影積み”の棟に、端部を“追いかけ巴”仕様で納め、ご夫婦ともに建築家の建主が描いた屋根のデザインが完成。

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周囲の山や草木、田畑の彩りにシンクロするように、薄墨、銀鼠、灰青、緑青…と、一枚一枚豊かな表情で魅せる“銀古美”の屋根は、もはや“風景”をつくっているようだ。

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均質化された工業製品とは違い、将来的に突飛な変色や決して綺麗とは言えない褪色もなく、ナチュラルにエイジングしていく土を焼いただけのこの“銀古美”の素朴な質感こそ、焼きものである瓦の本来的な魅力だと思う。

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軒出寸法1,200㎜がつくるシルエットと佇まいは本当に美しく…ただ、この達観を感じさせるほどの“シンプル”を創るためには、難易度の高い鎌軒瓦や袖瓦の合端加工など葺き師による妥協のない手仕事と、なにより一屋根に込める瓦愛のたまもの!

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足場が取れる頃、焼杉外壁との相性をまた見にきたいと思います(^^)

【銀古美 仕様】

軒:鎌軒瓦  ケラバ:普通袖瓦

棟:櫛面土瓦+熨斗2段(影積み)+素丸瓦

(*2段目を1段目より一寸出してより深い陰影で魅せるため、1段目の熨斗を割ったあと全てカットして幅詰めしている)

拝み部:石持(こくもち)巴に、棟端部の同じく石持巴を被せた“追いかけ巴”仕様

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設計施工:株式会社菅組

https://www.suga-ac.co.jp/

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#銀古美 #火入れ式 #神事 #菅組 #香川の家 #建築家の自邸 #農家住宅

お肌にも気をつかいます(笑)

今日の灼熱“銀古美”の窯出しから…いろいろ焼けてるなかで、今回も神頼みの“400角甃(しきがわら)”!

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行儀の選別、採寸後に、クライアントの要望によるオリーブオイル塗布…意地を張って素手でやってたが、あまりにも“ぬるぬる”が取れないので、回を重ねるごとにさすがに学習し、不本意ながら今回から執刀医のように薄ゴム手袋装着(笑)

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ハードな瓦づくり…スキンケアも大切ですね(^^)

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#オリーブオイル #エキストラバージンオイル #スキンケア #敷き瓦 #甃 #銀古美 #タイル #ビンテージタイル #瓦タイル #tile   #vintagetile

切落と面取の違い…分かりますか?

それにしても雨の多い8月だった⤵︎⤵︎⤵︎

この日も本降り…おかげで“雨の道”を追えた。

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同じ桟瓦でも“面取”よりこの“切落”のほうが構造的に“水の切れ”が良い。

自然の営みと先人の知恵は、こんな些細な現象においてさえ、あまりにも多くのことを教えてくれる!

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面取(めんとり)と切落(きりおち)…和瓦のこの決定的な二大意匠の違いを知っている設計者はどれぐらいいるだろう。

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本来は、もともとこの国に瓦が伝来した1,400年以上前から本平瓦も同じく“切落”にはじまり、新しい意匠的選択肢として“面取”が生まれ、戦後成長期の工業製品化と特に陶器瓦の大量産化が進むにつれ、歩留まりの良い“面取”のほうが全国的に普及判となった。

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“銀古美”においては、もちろん原点である切落意匠のみとしており、玄人にしか分からないかもしれないが、レトロかつモダンな印象をつくり、面として素朴でシンプルな空気感を纏う。

かたや面取は、面を取った部分が陽光を反射して白く光り、切落より繊細な表情で魅せるため数奇屋建築などに似合う。


木瓦はもちろん“切落”意匠だ(^^)

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好みにもよるが、本来は社寺や数奇屋、蔵、茶室など例えば建築意匠の違いにより重厚(切落) or 繊細(面取)のどちらで魅せるかによって使い分けたり、また地域によって根付いた歴史的・文化的背景の差で違ったりする。

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文化財建築や伝建地区の古建築等の改修や建て替えで、元は切落なのに安易に面取が葺かれているのを見ると残念だ。

“モノ”にはその生い立ちや成り立ちにおいて深い意味がある…たかが一枚の瓦においてさえ、それを掘り下げて知ることで、もっと良い建築になると思う(^^)

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#淡路島の家 #井上久実設計室 #建築家とつくる家 #銀古美

淡路島「さくらの家」

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軒は桟瓦、袖部には本平瓦を使用して究極シンプルなシルエットを描き、“銀古美”の瓦葺きが完工…銀古美のナチュラルな素材感と漆黒の焼杉との相性は抜群だ!

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これだけシャープな輪郭を描けると、素人目にも“重い”というイメージは一切払拭される。

1,000種類以上ある役物の多様な組合せで、重厚にも軽快にも表現できる歴史ある瓦の本領だ!

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【銀古美 仕様】

軒:桟瓦

右ケラバ:桟瓦

左ケラバ:九寸 本平瓦

棟:櫛面土瓦+甍覆

片流れ部:逆一文字瓦

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設計:井上久実設計室

施工:淡路工舎

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#淡路島の家 #井上久実設計室 #建築家とつくる家 #銀古美

とんがりました!!

高松の家、上屋根の“銀古美”瓦葺きが完成。

軒は桟瓦の葺き晒し、棟は甍覆(いらかおおい)のとてもシャープでシンプルな仕様。

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とくに「神明造り」にインスピレーションを得た甍覆巴の五角形の垂れを、今までより端部からもう一寸ほど深い中付けにしたことで、あくまでも主観だがより洗練されたシルエットを描けたと思う!

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目指したのは素朴であって凛とした佇まい…オンリーワンの“とんがった”モノづくりは楽しい(^^)

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設計施工:株式会社富山総合建築

https://www.facebook.com/tomiyamasougoukenchiku/

 


https://tomi-ken.com/

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#富山総合建築 #銀古美 #香川の家 #高松の家 #神明造り

シンプルな言語表現

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山に降った雨を谷へと流す…自然の摂理に適う“瓦”の普遍的デザインの魅力の本質を見抜く審美眼あってこその潔いファサードデザインは、さすが森田恭通さんだ!

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用の美をもって白銀比を実現する和瓦の曲率の美しさ…この唯一のデザインキーワードを大胆かつシンプルに表現する。

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妹島和世さんも、瀬戸内国際芸術祭の「犬島 家プロジェクト」で、桟瓦だけの葺き晒し仕様に瓦屋根の美しさの本質を見出し、最低限の言語で表現したのも同じだと思う!

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もっともシンプルな言語表現…まずはここからが大切だ!

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#妹島和世 #瀬戸内国際芸術祭