未来考房/瓦人 ~gajin~

和瓦とその未来を創る淡路島の瓦師ブログ

失われた30年…

瓦業界の運命を決定づけるような出来事から28年…それまでは瓦屋根に対してそれほどマイナスイメージもなかったように思うが、あの出来事を境に数値だけで見ると、例えば淡路瓦全体では総生産枚数も総出荷金額も共に10分の1以下にまで減少し、このコロナ禍の3年を経てさらにそれより深刻に落ち込んでいる。

 

瓦屋根に無知な大学教授(建築士)が、その当時テレビで倒壊の主原因を瓦屋根に押し付けた報道があり、それがまさしくきっかけとなり誤った風評被害が30年近く払拭できぬまま続いている。

 

地震による古い建物の倒壊は“瓦”の責任ではなく、耐震に関する要求仕様の古い建築基準法のもと昭和56年以前に建てられたものが多く倒壊している。

さらに80歳、100歳となると関係法律などまだ未整備な時代の、つまりただの古いものイジメ、年寄りイジメに過ぎない。

 

逆に瓦はその80年、100年と保っていること自体を褒めてあげてほしい。

責任は…逞しく暮らしを守り続けたこの素材達ではなく、未成熟な施工と脆弱な構造にある。

ヨーロッパでは倒壊や破損、劣化の原因によっては建築士や行政側が死刑も含めた重罪となるそうだ。

日本のように素材や職人だけに責任を押し付けたりしない!

 

あの阪神高速の衝撃的な倒壊映像を記憶されている方が多いと思うが、その間隙を縫って築数年のまだ新しい瓦屋根住宅がびくともしていないという対比の面白い写真を紹介する。

阪神高速や高層ビルのような発展の象徴のような建造物がへし折れても、単なる一軒の木造住宅は倒れない。

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とにかくこの大事件以降、瓦屋根は減り続け、瓦の窯元も次々倒産し、瓦葺き職人も全国で激減し、災害のたびに大工や左官も含め職人不足により伝統建築を直せなくなってしまっている。

「人の手」がいなくなると、そのうち現代建築どころか近未来建築も建てられなくなるだろう。

机上の計算だけでは「モノ」は作れないし、長寿命の大切なものを“直せない”。

 

確かに永く持続してきた技術や素材、そしてそれが育む文化的価値への理解をおざなりにし、成長主義にもとづくスクラップ&ビルド信奉はいつまで続くのか?

学術と技術だけの頭でっかちでは美しいものは生まれないし、これに芸術を加えた“三術”がバランスよく揃った取組みが大切だと思う。

 

震災とともに、皮肉にも経済までもを含め多くを失ってきた28年…そろそろ成長から成熟への方向転換が必要だと思うのは、その成長のおかげで何不自由なく育った団塊ジュニアど真ん中である我々の世代だからこそかもしれない。

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