未来考房/瓦人 ~gajin~

和瓦とその未来を創る淡路島の瓦師ブログ

かわらのおはなし…

設計者から根本的な質問を最近よく受けます。

「瓦のメリットとポテンシャルとは?」


兵庫県工業技術センターによる「屋根材の違いによる屋根表面および屋根裏温度への影響の検討」

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和型いぶし、平板いぶし、ガルバリウム、コロニアルの4種類の屋根材を試験架台に施工(断熱材等なし)し、屋根材直上と、野地裏直上に温度計を設置。

夏場の実験棟屋上にて4日間 昼夜継続して測定。

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サーモグラフィーの通り、表面直上温度はもちろんどの屋根材でも高温となるが、野地裏直上温度は金属やスレートと比べて、土を焼いた“瓦”は10℃近くも低くなる。

断熱材も何もない単なる素材のポテンシャルだけで、建築にかかる負荷に夏と冬ほどの差が出る。

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これは“土もの”としての素材優位性もあるが、形状特性として野地との間に設けられる通気層の存在効果が大きい。

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この通気層の存在は結露対策にも効果的で、下葺き材や野地等の劣化も他の屋根材より抑えられることが、つくば建築試験研究センターによる「木造住宅の耐久性向上に関わる建築外皮の構造・仕様とその評価に関する研究」で検証されている。

ようは屋根材別 長期曝露試験による野地等の経年変化比較試験ですが、曝露期間は30年超で、結果和瓦以外は明らかに下葺き材と野地の腐朽が見られる。

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以下、研究論文より引用…

軒先付近の劣化は金属系屋根材で顕著。

特に瓦棒葺きは軒先付近の心木直下の下地が劣化している。心木自体も軒先部が著しく劣化し、一部消失しているものがあることや、心木下部に下葺き材が無いことから、桟鼻付近から雨水が浸入して劣化に至ったものと考えられる。

またケラバ部からの漏水と屋根材同士の取合い部からの雨水侵入による影響も大きい!

 

現在、金属やスレート系屋根材の普及が多いが、結局は同様の構造なので、経年で野地板が腐朽するリスクを抱えています。

 

建築建材として“絶対”というものはないが、先人の叡智とその積み重ねが紡ぐ1,000年余に及ぶ瓦の歴史とは改めて素晴らしいものだと思う。

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その歴史の系譜の一端を担うものとして、この素晴らしい建材を未来にも繋げるべくますます精進したい!

また瓦屋根が織り成す美しい日本風景を、守るだけではなく津々浦々に新しく創っていきたいと思う(^^)

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#SDGs   #持続可能性 #自然素材 #サステナブル建材 #瓦